私たちは、ある日こんなことを話した(6)

久々に、ピアハウスでのトークの記録「私たちは、ある日こんなことを話した」シリーズを。
今回は、とある男性と永嶋のトークです。(ご本人の承諾を得て掲載します)

永嶋: この前紙に書いてもらった「こころが豆腐すぎる」って言葉、すごくよかったと思うんですが、それに簡単に答えを示したりアドバイスをしたりするのは自助グループの役割じゃないと思っていたりするんですちなみに豆腐すぎるっての意をもう少し解説していただければ(笑)

Aさん: 自分の発言が人にどう思われるか気にしてしまったりするんです

永嶋: 傷つけたりしないかとか?

Aさん: そうそう、不快に思わないかなとか

永嶋: てことは、それって美点のような気も

Aさん: 美点ですか。言葉をいちいち選んでしまうんです

永嶋: どういうふうに?

Aさん: ちょっとした言い回しとか敬語の使い方とか気を遣ってしまうとかありますね

永嶋: ある面でいい人ですよね

Aさん: (笑)

永嶋: 別の視点でみれば、人を気にし過ぎている。これは治した方がいいんですかね?

Aさん: どうなんだろ。もう治らない気がするんだよな……どんな仲のいい友達でも、気を遣っちゃうんですよね
    恋愛的なものになるとただのいい人で終わるし。うしろめたさがあるんですよ、働いていないという

永嶋: ということは、学生の頃は人を気にし過ぎることはなかった?

Aさん: そういえば、学生の頃はなかったですね。伸び伸びとしてたかも。ケンカもしたし

永嶋: ケンカは友達と?

Aさん: ええ。口論とか。ひきこもってから後年はまったくないです。

永嶋: 家では?

Aさん: 家では特別だから緊張してましたね。学生時代は友達の前の方が自然体でした。

永嶋: 考えると、働いていないという後ろめたさが、人を傷つけないようにという気遣いになるのは、すぐに結びつかない気もするんですが

Aさん: 負い目というか、みんな働いて苦労してるのに、自分はなんの苦労もなく暮らしているってことで、気を遣っちゃうんですよねやっぱ働いてないと申し訳なさってのがあるんですよね。母親が外に出るとき、ちょっとドアをあけて辺りを気にするようになって、萎縮する感じになったのも、自分が働いていないってことがあるからだと思うんです

永嶋: でも働いている人は働いていることで堂々としていられて、働いていない人は常に負い目を感じているとすれば、それなりにお互い苦労があるような気も(笑)

Aさん: でも世間的には働いているほうが圧倒的にえらいわけで(笑)人と会話していても、あいづちを打つことしかできないですもん。自分の意見を言う事ができない。

永嶋: 当事者って自分の意見が言えないけど、世間に完全に合わせることが不得手な人が多いですよね

Aさん: うん

永嶋: だからダメって話でもないと思うんですよね

Aさん: でも世間の大多数は否定的な気がする

永嶋: なんで否定的なんですかね

Aさん: やはり、はたらかざるもの食うべからずという価値観が強いのではないでしょうか

永嶋:  Aさんは、いかなる働きもしたくないってのとはちょっと違いますよね?

Aさん: 僕の場合は、働きたいのは働きたいんですけど、不安とか恐怖心とかすごいんですよね

永嶋:  働く以外の場であれば、大丈夫だけど、働く場に対する不安と恐怖があると

Aさん: そうですね

永嶋:  僕が昔の職安で「あんたに紹介する仕事なんてないから帰って」と言われて、チキンハートなもんで、それ以来長い間、 正社員の職には応募できなくなっちゃったんですけどね……その辺の働く不安と恐怖は、就職活動での挫折みたいなものが最初のきっかけなんですか?

Aさん: いや、それ以前の……なんなんだろう

永嶋:  その辺はよく言葉にできない感じですかね

Aさん: そうですね。就職活動の最後の方は、説明会に行くのすら苦痛でしかたなかったです。人に飲まれるというか。人に圧倒される感じがすごくて

永嶋:  人って会社の人ですか?

Aさん: 両方

永嶋:  ああ、説明会に来てる学生もってことですね

Aさん: うん

永嶋:  学生時代のバイト経験とかが影響してるんですかね

Aさん: 〇〇の短期バイトとかですね

永嶋:  例の(笑)

Aさん: そう、例の

永嶋:  そこで、ひどい目にあった(笑)

Aさん: クレーム対応

永嶋: 短期バイトにクレーム対応やらせちゃうんですね

Aさん: そう。クレーム対応だけでなく色々やったんですけど

永嶋:  怒られるってことがネックなんですかね?

Aさん: その辺からジワジワと豆腐心が(笑)それまで家庭以外で怒られた経験があまりなく、父親以外に怒られたこと無かったんですよね。学校でも優等生だったし。おばあちゃんに礼儀とか作法とか躾られていて

永嶋:  つまり、大人受けのよい子どもみたいな?

Aさん: そうですね

永嶋:  あ、僕と同じですね。今、汚れた中年ですけど

Aさん: いい子でした、いわゆる

永嶋:  ギャップがあったんですかね。働く場ってある意味、理不尽さが充満してるじゃないですか

Aさん: うん

永嶋:  なんだろう

Aさん: 自分でもよくわからないうちに、漠然とした不安感が出てきたんですよね

永嶋:  僕なんか傷つくことも嫌だけど傷つけることも嫌みたいな感覚が若い頃あったんですけど、そういうのあります?

Aさん: あります。でもどちらかというと圧倒的に傷つく方が怖いです

永嶋:  僕は最近、人を傷つけることをかなりやってる気がしますけど、でも自分が傷つくのは相変わらず嫌だったりします。とはいうものの傷つきますけど(笑)歳とってもわりと心が豆腐ですね。年齢相応の成熟していない自分がちょっと嫌だったりね。


[ 私たちは、ある日こんなことを話した(6) ]私たちは、ある日こんなことを話した2017/01/31 19:54